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朝ぼらけタイガー

読んだ本のレビューが中心です。ランニングなどその他趣味の話も。NPOや自治体など「公益組織」向けのコンサルティングが本業です。元はwebディレクター。

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2016年読んで面白かった本10冊

12:本のはなし 11:書評

2017年一発目の投稿は昨年のまとめから。


昨年は自分の読書のテーマである「他ジャンルを幅広く」があまり実践できなかったのでまとめ記事やらないつもりだったのですが、2014年、2015年とせっかく続けていたので書くことにしました。

 

昨年「幅広く」本を読むことができなかったのは転職を機にインターネットや広告といった仕事関連の本を読むことが多かったためです。
もちろん技術系の本にも面白かった本はたくさんあるのですが、そうした本は対象読者が限られてしまうので対象外としています。
今年は昨年よりも少なめの全10冊(10作品)。「小説・エッセイ以外」「小説・エッセイ」の二つのカテゴリに分けていて、順番は基本的に読んだ順、発売年は昨年とは限らないという点は過去のまとめと同様です。

 

過去のまとめ 

 

 

 小説・エッセイ以外

まずは小説とエッセイ以外の本から。技術系の本は外したのですが、それでも仕事に関係する本が多くなりましたね。転職して仕事で関わる分野が広がった、ということもありますが。

 

はじめてのGTD

全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

 

 年初に読んだ本。GTDは就職した年に部署の先輩に薦められて『ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則』を読んでいました。考えることややるべきことが山積みで混乱しているときに改めて、ということで読みました。非常に良い本です。「マルチタスクの重要性」ということが語られることの多い時代ですが、向き不向きはあるにしろ根本的に人間の脳みそはマルチタスクには向いていません。というかコンピュータだって「同時進行する」という厳密な意味ではマルチタスクはやっておらず計算処理を淡々と切り替えながら実行しているわけです。で、そうした切り替えをするときに大事になるのが「今何をするべきか?」という問いを立て、それにきちんと答えるということを続けられるかどうかということ。GTDというのはそれをうまくやるためのシステム作りの本です。単なる心がけの話ではなく、デジタルあるいはアナログの外部装置をうまく利用しながらやるんですよ、という方法論を示してくれます。新しい仕事にも慣れ始め、仕事の仕方を改めていくところなのでもう一度読み返しながら自分のタスク管理をアップデートしたいと思います。

 

21世紀の貨幣論 

21世紀の貨幣論

21世紀の貨幣論

 

 帯に書いてあった“桁外れの知的衝撃!ジャレド・ダイアモンド級!"というキャッチコピーに笑いながらもまんまとハマって読んだ本。アホみたいなキャッチコピーだけどターゲティング上は正しいように感じるのが悔しい。読んだ感想としては「知的興奮」という意味ではジャレド・ダイアモンドに軍配が上がりますが、それでも面白い本であることは間違いない。貨幣の発達として多くの人の頭にある「経済は物々交換から始まり、規模が徐々に大きくなるに連れて、交換をより円滑に進めるための交換の手段となるモノとして貨幣が導入されていった」というのは誤っているというところから始まります。物々交換経済なんてなかった、と。では貨幣の歴史とはどんなものであったのか。貨幣とはどんな機能を持ち、現在考えるべきことは何なのか。ここ最近Fintechが話題になっているせいか貨幣にまつわる書籍も大量に出ていますが、本書は中でも非常に丁寧でオススメ。

 

あなたのまちの政治は案外、あなたの力でも変えられる

先日つくば市長選に当選した五十嵐立青さんの著作。私は筑波大学時代に、当時つくば市議会議員であった立青さんのもとで議員インターンシップを経験しました。ちょうど彼の2度目の市議選の際の選挙事務所スタッフとして様々なことを経験させてもらいました。そうした経緯があるのでどうしても身内褒めっぽくなってしまう部分はぬぐいきれないのかもしれませんが、それを思い切り差し引いても非常に丁寧で分かりやすい、ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊です(ステマではないです)。日本では「政治」というとどうしても遠いものと感じてしまう人が多いのではないでしょうか。少しぐらい関心を持っていてもニュースや新聞で語られていることは難しくて分からない、自分が関わることのできるものだなんて考えられない。そうした声を周囲の友人からも聞きます。本書はそうした方に対し、「政治への関わり方」を物語調に丁寧に伝えていきます。トランプ大統領が誕生する今年、"グローバリズムからグローカリズムへ"というのは今年大きなテーマの一つとなるでしょう。日本でも地方創生をはじめ”地域”や”まち"が見直される年になることと思います。私たちの身近な"まちの問題”や"暮らしの問題”にどのように関わっていけば良いのか、ぜひこの本を読んで考えてみてほしいです。特に街づくりや地域おこしということに関わる方は必読です。

 

新版 図解・問題解決入門―問題の見つけ方と手の打ち方

新版 図解・問題解決入門―問題の見つけ方と手の打ち方

新版 図解・問題解決入門―問題の見つけ方と手の打ち方

 

 コンサルタントに転職してすぐに読んだ本。コンサルタントの仕事というのはまさに「問題解決」です。入門と冠される本ですので非常に分かりやすいですが、書かれていることは非常に本質的。「問題とは理想と現実のギャップである」このことを知ることが、非常に重要。コンサルタントも基本的にこの原則から思考を始めることになります。そしてこのことを考える上で必要になるのが「目標ととなるあるべき姿とは何か」や「現在の状態の正しい把握」です。ロジカルシンキングの得意な人が「定義付け」から議論を始めるのはこの思考様式が染み付いているからです。不確定性の多い時代にあっては、「問い」や「理想」を自ら設定する力というのがますます必要になっていきます。最初の一冊にぜひどうぞ。

 

働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀

働く意義の見つけ方―――仕事を「志事」にする流儀

働く意義の見つけ方―――仕事を「志事」にする流儀

 

 この年末年始の読書で最初に読んだ一冊。大企業の社員を途上国のNPO等に送り込んで社会課題の解決に取り組むという「留職」というプログラムを提供しているクロスフィールズというNPOの代表小沼大地さんの著作。2016年最後に読んだ本にしてアツくなる一冊でした。「自分」と「仕事」と「社会」の3つが1本の線でつながっている状態が「働く意義を感じている状態」という定義は非常に納得度が高いです。「社会を変える」ためには想いの力が根底にあること非常に重要ですが、実際にことを成すには青臭い想いだけでは不十分で、戦略的に物事を進めていくある種の腹黒さも必要不可欠。つまり、青臭さと腹黒さをあわせた「青黒さ」とも呼べる力が大切だ、という言葉も非常に同感。2017年は働き方革命も大きなテーマの一つになるでしょう。このテーマを考える際に単に労働時間という視点からだけ考えるのではもったいない。多くの人がやりがいをもって充実した仕事を行っていくために何を考えなければいけないのかアツく、分かりやすく書かれています。おそらく私がこれから会う友人たちに進める機会の多くなる一冊です。

 

 

小説・エッセイ

続いて小説・エッセイから5作品。2016年はこの他に吉川英治三国志を読んだり、電子書籍で安売りしていたのに飛びついて買った昔読んだライトノベルスレイヤーズ)を読み返してみたりと、長編をけっこう読んだ年でしたね。

 

精霊の守り人守り人シリーズ

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

 

 全10巻+短編集ということでわりと長いシリーズですが一気に読み切ってしまいました。世界観の作り込みが本当にすごい。昔からファンタジー小説が好きで、ライトノベル含めいろいろと読んできましたが、個人的な好みでは圧倒的一位を奪取する作品となりました。神は細部に宿るなんていいますが、料理や服装といった背景となる文化的な部分などストーリーの本筋に直接は絡まない部分の作り込みが本当に素晴らしく引き込まれます。料理に至っては作中の料理に関する本も出ているぐらいです。いやもう本当に美味しそうなんです。そしてもちろん宗教や政治といった本筋に関わる部分も素晴らしいですし、魅力的なキャラ、戦闘シーン等の描写もとてもうまい。著者の上橋さんは文化人類学者であり、アボリジニの研究などをなさっています。そうした研究の成果が作品作りにもふんだんに活かされており、楽しみながらも考えさせられる部分も多い作品です。チャグムが主人公となる「旅人」の2作品が特にお気に入り。大人にも子どもにもオススメ。

 

セルフ・クラフト・ワールド(1〜3)

 「異世界転生」系の作品を意識的に多く読んでいる中で見つけた作品。いろいろ読んだ中でも特に面白かったです。「セルフクラフト」というヴァーチャルMMOを舞台としたお話で、ゲーム世界のAI生物「G-LIFE」が自律進化を初め、その生物的機能の応用を現実世界に持ち込むことで技術革新が大きく進み、ヴァーチャルゲームの世界は国際競争や国力維持のための重要資産となった、、というような背景で繰り広げられるSF作品です。AIやロボットの自律進化という点もゲーム世界への転生も珍しい設定ではないですが、本作品が面白いのは「民主主義」がテーマとなっている点。言うなれば”AI民主主義SF”。そんなキャッチコピーじゃ誰も読まないでしょうけども。ブレグジットやヒラリー敗北など、従来の流れではあまり考えられなかったような結果が「民主主義的に」出てきて社会システムの綻びが感じられる昨今、民主主義について改めて考えてみる際に小説を読んでみるのも面白いと思います。邪道と感じる方もいるかもしれませんが、SFを題材に未来について考えるというのは、実は非常にシンプルに考えるべきポイントを強調してくれるので面白いと思います。

 

人生なんて無意味だ

人生なんて無意味だ

人生なんて無意味だ

 

 タイトルそのままのド直球のニヒリズムを突きつける児童書。子どもも大人も読むべき。特に日本では大人がこの本を子どもに読んでみなさい、と言える勇気を持つことができるかどうかというところですね。難しいと思いますが。「命を大切にしなさい」とか「人にやさしく」とか「夢を持て」とかいくら学校で言われたところで、子どもたちが片手に持つスマホを覗けば、「死にたい」という悲痛な声に「じゃあ死ねよ」という回答がベストアンサーに選ばれるような剥き出しの悪意(書き手本人は悪意とすら思っていない可能性があるのがまた質が悪い)に触れてしまうのが現在の子どもたちの日常です。どう生きるべきかなんて大人だってわからないし、不安に思っているのだから、だとしたらせめて「分からないということ、不安があるということ」をありのままに伝えるというのが真摯な行いだと、個人的には思います。

 

 

樅ノ木は残った 

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

 

 山本周五郎の3大長編の一つ。おそらく周五郎の長編では最も有名な作品なのだと思いますが、周五郎を読み始めて約10年でやっと読みました。昔NHK大河ドラマでもやっているそうですね。話の主軸はお家騒動ですので、騒動自体が起こるのは当然終盤、それまでは地味な裏工作が続くのですが、そんなテーマでどうやって一年続けたのか気になります。従来悪人と考えられていた原田甲斐をお家騒動の汚名を自ら被った悲劇の名臣として新視点で描くという試みがなされている作品で、周五郎は何人か同様のことを試みていますが、どれも面白いです。周五郎作品の大きなテーマとして感じるのが「克己」なのですが、世間に悪人と見られている人物が内面でどんなことを考えていたのかという視点はこの「克己」ということが非常に考えやすくなる視点なのでしょう。周五郎の長編作の主人公の生き方は非常に自律的で厳しいものが多い。本作の主人公の甲斐もそうです。その姿勢は3大長編で徐々に強化されていきます。個人的な好みでは『虚空遍歴』、『ながい坂』、『樅ノ木は残った』の順なのですが、周五郎の長編作をどれか一作だけ読みたいと言われたら『樅ノ木は残った』を薦めます。主人公の姿勢と歴史解釈への問いかけ、そしてエンタメ感が一番程よいバランスで実現している作品ということで。

 

走ることについて語るときに僕の語ること

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

 

 村上春樹によるランニングに関するエッセイの名著。先日レビューを書いたばかりなので詳しくはそちらで。 

 

 


以上です。少しでも誰かの読書欲を刺激できたら幸いです。


今年はまた幅広いジャンルを読んで自分の思考を作っていきたいです。
レビューもなるべく書いていきたいと思っていますのでどうぞ宜しくお願い致します。