朝ぼらけタイガー

読んだ本のレビューが中心です。ランニングなどその他趣味の話も。NPOや自治体など「公益組織」向けのコンサルティングが本業です。元はwebディレクター。

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『100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート』で活力資産を貯める生き方を考える − 『LIFE SHIFT』について語るときに僕の語る本 ③

『LIFE SHIFT』について考える記事第3弾。
 
第1弾では、『LIFE SHIFT』の要約をした上で、そこで重要なキーワードとなる「マルチステージの人生」に当てはめながら自分自身の人生の振り返りをしてみました。

 

第2弾では、マルチステージの人生の根底となる「働くこと」について考える際にヒントになる本を参照し、「自分」と「仕事」と「社会」をどのような関係で捉えられるかという部分がポイントになることを考えました。

 
先の2つの記事では主に「マルチステージの人生」というキーワードについて考えてきましたが、本記事では『LIFE SHIFT』において掲げられていたもう一つな重要なキーワードについて考えてみます。
 

「活力資産」は働くことで損なわれる?

『LIFE SHIFT』について考える上で重要なキーワードの2つ目は「無形資産」でした。お金などの有形資産だけでなく家族や友人、スキルや知識、健康といったものをいかに形成していくかが人生100年と呼ばれる長い寿命や、それによって延びる働く期間を渡りきるために重要であるということでした。そして無形資産は、生産性資産・活力資産・変身資産の3つに分けることができます。
 
3つの資産はそれぞれ以下のような定義でした。

生産性資産

仕事に役立つスキルや知識、仕事につながる周囲との人間関係や評判など仕事の成功に役立つ要素

活力資産

健康、友人、愛など、それぞれの人に肉体的、精神的な幸福感と充実感をもたせ、やる気をかきたて、前向きな気持にさせてくれるもの

変身資産

新ステージへの以降を成功させる意志や能力、多様性に富んだ人的ネットワークなど
 
個人的には特に考えなければならないのは「活力資産」だと感じています。
 
なぜ特に活力資産について考えなければいけないのでしょうか。
 
活力資産が重要で、他の二つがそうではないということではありません。
3つ全部重要なのですが、特に活力資産については意識しなければ貯めにくくなりやすいというのが、私のような小忙しく働く日本の若い世代に多く表れている状況なのではないかと感じるからです。
 
どういうことかというと、生産性資産と変身資産は仕事を通じて資産形成していくことがある程度以上可能であるのに対して、活力資産はむしろ仕事に埋没する中で損なわれていってしまうものだからです。
 
第2弾の記事で紹介した『自分をいかして生きる (ちくま文庫)』では
社会に寄った働き方をしていると自分自身との対話がとぎれ、感受性や感情回路の遮断はそのまま全人的な実感の喪失につながりかねない
と、肉体的・精神的にすり減りながら働くことについて考察しています。
 
マルチステージの移行をしながら長い労働人生を進んでいくことになるLIFE SHIFT時代においては、仕事によって有形資産(お金)を築いていくことも重要であると同時に仕事を通じて生産性資産や変身資産も貯めていかなければならないが、心身の健康など生きる上での幸福度に直結しそうな活力資産については働く(働きすぎる)ことにってむしろ損なわれてしまう危険性があるということです。
 
ではどうすれば良いのか。
 
身も蓋もない単純な言い方ですが、適度に働くということかと思います。働くことを含めた「生活」全体のバランスを取ることから考えていく必要があるのではないでしょうか。
 
そんなことを考えるときのヒントになる一冊をご紹介します。
 
100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

 

 

『100の基本』とはどんな本か?

雑誌『暮らしの手帖』の編集長を長く務めた松浦弥太郎さんが、ご自身の生活の中で守っている「100個の基本的なルール」について書かれている本です。
 
友人との関係を具体的にどう考えているか。
生活の中でのどういうふるまいや時間の過ごし方を大切にし。
自分が生きているという実感をどのように感じ取っていくのか。
 
そんな生活の中で大切にしていることや気をつけていることが100個書かれています。
 
1ページにルールが一つ記載され、見開きで対になるページにはその簡単な解説という余裕のある装丁と合わせて、ゆったりとした丁寧な生き方を感じる本です。
 
例えば人との関係について。
幸せとは、人と深くつながること。絆を深めること。
「あなたにとって、幸せとは何ですか」、こう聞かれて即答できますか?僕たちはみな、幸せのために生きています。人と自分の幸せのために仕事をし、暮らしています。自分にとっての幸せを知るとは、自分が何を求めて生きているかを知ることです。僕の幸せは人と深くつながること。絆を深めることが一番の幸せです。その先に「幸せな景色」が見えているから、毎日一生懸命に頑張れるのです。
 
「働く」というキーワードに関連してはこんなルール。
働くために遊ぶ
「遊ぶために働く」というのは、ちょっと違う気がします。いい仕事をするには、よく遊ぶべきであり、遊ぶというのはいろいろな経験をするということです。経験を通して身につけた情報は、仕事にも役立ちます。仕事ばかりしている人より、充実した生活をしている人のほうがいい仕事ができ、思いやりや想像力も身につきます。一生懸命遊びましょう。「素晴らしい仕事をしているな」と思う人ほど、大いに遊んでいるものです。
 
仕事人間にはならない。生活人間になる
仕事をとったら何も残らないような人間にだけは、なりたくないと思います。たとえ仕事がなくても、生活を楽しめる人間でありたいと願っています。生活は、仕事を活かす土台です。「優秀だけど、休みの日に会うとつまらない」という仕事人間は、なんとも寂しいものです。
 
などなど。いかがでしょうか。
 

生活のバランスを取るとはどういうことか

人によっては「説教臭い」というようなことを感じる方もいらっしゃるのかもしれません。ただ、私たち一人ひとりが考えなければならないのは松浦さんの「基本」を真似をすることではなくて、自分なりの「基本」を考えてみることだと感じます。
 
先に生活全体のバランスを取ることが必要なのではないか、と書きましたが「生活のバランスを取る」とは必ずしも全員が同じような規則正しい生活を送ればいいと考えているわけではありません。バランスは人それぞれですし、バランスを取るというのは一点に定まることではなく、常に両側に揺れ続けることです(ちなみにこの言葉は第2弾の記事で紹介した『自分をいかして生きる』の中で著者西村さんが仰っていた言葉でもあります)。
 
『LIFE SHIFT』で紹介されるロールモデルの中にも、ステージによっては企業でハードワークをする時期も肯定されています。
 
生活全体のバランスを取るというときのバランスの揺れ幅だって人それぞれで良いというのがマルチステージ時代の多様性であり、「活力資産」の貯め方もまた然りということでしょう。
 
一口に活力資産といってもその要素は、「健康」「友人」「愛」など多岐に渡ります。何をどのくらい重視するのかも人によって変わる部分だと思いますが、「自分の人生において大切なのはどれだろう?」とストレートに考えていくのが難しい場合も『100の基本』のような本からヒントを得ていくということは有効なのではないかと思います。
 
以上、第3弾となる本記事では「活力資産」について考えました。
本記事までで『LIFE SHIFT』で掲げられる重要な二つのキーワードについて考えてきました。二つのキーワードについて丁寧に考えるということが個人の視点としてLIFE SHIFT時代を考える上で大切だと思います。
 
次回の記事では少し視点を変えて、社会全体の視点からLIFE SHIFT時代について考えて見たいと思います。
 
100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート