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朝ぼらけタイガー

読んだ本のレビューが中心です。ランニングなどその他趣味の話も。NPOや自治体など「公益組織」向けのコンサルティングが本業です。元はwebディレクター。

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レビュー:『小春日和』おとなになってビルドゥングスロマンを振り返る

11:書評 小説
どうも。ご無沙汰しています。2ヶ月以上ぶりの更新。
 

 

小春日和(インディアン・サマー) (河出文庫―文芸コレクション)
 

 

少女小説系譜

解説によると少女小説系譜、ということらしい。

ただ、類型としてはビルドゥングスロマン系譜という方がしっくりくる。というかそのつもりで読んだ。
 
大学生活の始まり、友人との関わり、家族との関わり、社会との距離感、そんなあれやこれやで形成されていく自己、そして成長。

と、こうキーワードを切り出してくるとまさにビルドゥングスロマン

さて、この作品においての特徴は、居候先の作家の叔母との会話とその叔母による短編作品が挿話されることであるのですが、まぁそこは置いておいて。
 

小説の登場人物たちの特異性

主人公にしろ、友人にしろ、やたらと小説や映画に詳しいというのはビルドゥングスロマンにおける決まり事の一つなのだろうか。

いちいち小説や映画を引き合いに出した会話をしてみたり、行動様式がそれらに引っ張られてみたりと、いちいちしゃれているというか鼻につくというか。別にいらいらするわけではなくてむしろ楽しいんだけどね。
 
テーマは違うけど同じく青春小説であるところの『Go』なんかでも主人公も彼女のやりとりもとても趣味が深かった。まぁそういうキャラ設定だと言ってしまえばそれまでだし(『小春日和』の場合は「小説家とその姪」ということでまさにちゃんとキャラ設定してある)、それを書いている作家自身がそういう若者であったのだと言ってしまえばそれまでなんだけども、実際問題そこまでこうした分野に知識量が多い人間同士が集まることはそうはない。
ちょっとした「本好き」程度じゃ実現し得ないからね、この手の小説における会話って。

で、ですよ。
僕みたいな田舎育ちの人間が中学や高校ぐらいのときにこういう小説を読むと、こういう登場人物たちを知って「あーなんてオシャレ」とか思うわけです。「俺も本好きだし、何年後かにはこうなってるわけか」、みたいな。
 
ただ、現実は違った。
まぁ本は読み続けてたし今でも読み続けて並以上には読んでると思うけど、並ぐらいの読書量じゃあまったくまったく。
そして、そこに張り合ってくるような変態的なほどの知識を備えた奴と偶然に出会う、とかもまぁない。
知識を備えたやつと出会いに行く、というより、たまたま出会ってつるんでるやつが趣味もあう、ってパターンだからねたいてい。
 
そんなことは、ねえ。
 
もちろん中には小説の登場人物をなぞったような知識量でもっておしゃれーな会話してたりする人もいるんです。それは知ってる。ただ自分が違ってたってだけ。
 

小説と現実の違いに折り合いをつける

でもたぶん、この手の小説を楽しんでいる読者のうちの大半は僕と同じ側だと思うんだよね。
 
で、それじゃあこうした小説の役割って何かというと。
 
現実と自分の距離感をはかって自分の形を認識していく。
 
つまり、自己形成。
 
自己形成のやり方なんてのは人それぞれ違っていると思うのですが、「本から入って本でイメージしたものとの違いを知っていく」というやり方が性に合う人もいるわけです。
性に合っているというかそうせざると得なくて、なんというか現実との折り合いをなんとか見つけていく作業というか。
 
うーん、なかなか伝わりにくそうな感じになってきましたが、こんなことを考えながらまぁこういう消費の仕方はビルドゥングスロマン的なものの受容の仕方としてはある意味王道的に楽しめているのかなとか思うわけです。
 
そんなこんな、大人になってから青春小説を読んで、昔の本の読み方を思い出す小説でした。
良い作品だな、と思う。ただ、10年前高校生だった頃に読んでハマっていただろうかと考えるとちょっと悩む。
なんというか、大人の手前という時期の独特のあやうさみたいな雰囲気が、この作品にはちょっと薄い。若い時に読むその手の小説の最大の魅力はそれだと思うのですが。
 
それはおそらくこの作品を書いた時の著者自身の立場はおばさんの方に近い訳で、その意味で「大人から見る少女」という視点が強い。
だからこそ僕も自分の少年時代をこんなにも想起したんじゃなかろうかと。
 
ということで、わりと大人向けな印象。
この人の若いころの作品はどんなだったんでしょう。けっこうするどさがありそうな気がする。そのうち読んでみようかと思います。
 

以上

あまりに久しぶりで感覚がよく分かりません。

読み終わっている本はかなり溜まっているので、また暇を作ってぼちぼち書いていきたいと思います。

引き続き、よろしくどうぞ。

ではまた。

 

 

小春日和(インディアン・サマー) (河出文庫―文芸コレクション)