朝ぼらけタイガー

読んだ本のレビューが中心です。ランニングなどその他趣味の話も。NPOや自治体など「公益組織」向けのコンサルティングが本業です。元はwebディレクター。

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レビュー:「論理と感性は相反しない」山崎ナオコーラ攻略本。中級者向け。

山崎ナオコーラの掌編集。
 
著者の小説観を文章化したものというか、
いやそんなに分かりやすいものじゃないか。
 
掌編集というのはこういう雰囲気のものが多いんですかね。
今まで読んだいくつかからはだいたい同じ雰囲気を感じた。
いや、雰囲気自体はそれぞれ全然別なんですけども。
 
なんというか、話の筋自体がどうこういうわけではなくて、
全体を通してか、もしくは一文一文を通して何かを伝えようとする感じ。
それでいて、いやそうだからこそなのか、表現は実験的。
 
この作品の場合は、著者の小説観だったり、小説家である自分であったり、それに対する周りとのあれこれであったり、そういうものを表現したものなのかな、とか思ってみます。
通して読んでみると、確かにこれを普通のインタビューとかで語られるよりはなんだかずっと伝わってきたような気がする。まぁあくまで気がする、ですけど。
 
そういう勘ぐりを著者が求めているのかどうかはよく分かりません。
あとがきで本人が称する通りであれば、あくまでこの小説は「フィクション」であり、「気兼ねなく、自由に、遊び心満載に、ふざけにふざけ」た産物です。
 
ふざけにふざけた感じはもう大成功でしょう。が、これ、ファン以外が読むのはなかなか大変だろう。
特に、1話目の表題作「論理と感性は相反しない」はファンからしても若干違和感のある文章だった。
なんというか、三人称視点がぎこちない感じ。その後は慣れた感じの一人称に戻るので、違和感はすぐなくなりますが。わざとなんですかね。文章的なぎこちなさ、というか軽さというか。
 
著者の小説に興味があるなら、「人のセックスを笑うな」か「カツラ美容室別室」あたりから入るのをオススメします。
著者の感性に興味があるなら「指先からソーダ」をオススメします。
この本はそこら辺読んでから、もうちょっといってみようかなと思えた人が手にとったらいいと思う。
著者のことがいろいろわかった気になれるような慣れないような、本編(他の小説)を楽しむだけなら読まなくても良いようないろいろが書かれているという意味では、わりと中級以上の人向けの攻略本という感じ。何を攻略してるんだかわからないですけどね。
 
それにしてもこういう掌編集を読むと本当に作家という職業で生きる人が羨ましく感じる。
文章でこんな風に遊べるというのはなんて素敵なことなんだろう。
 

 

論理と感性は相反しない (講談社文庫)

論理と感性は相反しない (講談社文庫)