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朝ぼらけタイガー

読んだ本のレビューが中心です。ランニングなどその他趣味の話も。NPOや自治体など「公益組織」向けのコンサルティングが本業です。元はwebディレクター。

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レビュー:「チームが機能するとはどういうことか」リーダーの役割をリフレーミングする一冊

11:書評 マネジメント
周五郎の後にそれですか、って感じもするかもしれませんが、これです。
基本的にジャンルばらばらで幅広く読んでいきます。
 
 
これはなかなかに感動的な本でした。
ひさびさに付箋貼りまくりましたよ。
 

■チームを率いるすべての人におすすめ

 

この本はタイトルの通り「チーム」についての研究です。
 
チームとしてうまくまとまるチーム、まとまらないチーム。
うまく結果を出せるチーム、出せないチーム。
 
誰しも色んなチームを見たり、自分で経験したりしてると思いますが、
そういうチームというものの運営に興味のある人はぜひぜひ読んでみて欲しい1冊。
 
基本的にビジネス書に分類される本だと思いますし、ベースとなっているのはさまざまな経営理論の知見です。しかし、チームというのはビジネスの場だけのものではもちろんなくて、NPOなどNon Profitな様々な組織にも活かせるし、学校の教室運営なんかにも応用可能な内容が盛りだくさんでした。
 

■最新の理論をチームにおける「リーダーシップ」の観点から再定義

 

付箋貼ったとこ全部取り上げていたらきりがないので、ざっくりとまとめますと、
この本の価値はリーダーの役割を再定義したこと、でしょう。
 
古今東西の様々な経営理論、リーダーシップ論に加えて、心理学などの最新の成果を盛り込みつつ、著者自身によるインタビューや実験などの研究結果の集大成と言える本なのですが、
いろいろな理論を参照しているのでこの手の本を読み慣れている人にとっては、前提の整理自体は目新しいものではないと思います。
 
  • チームが立ち向かう課題は分類することができる
  • ルーチン業務、複雑な業務、イノベーションの業務
  • それぞれのチームが関わる課題が何なのかを見極めることが大切である
  • 業務によって目指すべきチームの形は変わる
  • いまの時代、これまでのルーチン業務で対処できる問題ばかりではなく、イノベーションの業務が増えている
  • イノベーションの業務には上手に失敗し、早く成功する「学習する組織(チーム)」を作ることが大切である
 
特に後半、学習する組織という議論自体は、近年言われているリーンスタートアップとほぼ重複する内容です。引かれている理想事例もトヨタウェイであったり、IDEOであったりと、おなじみの顔ぶれ。
 
ただ、リーンスタートアップを読んだ時もそうだったんですが、
うん、そういう体制作れたらすごいよね、
とは思うんだけど、じゃあ実際にどうしたらいいの?ってなるんですよね。
 
その大切さはわかったけど、自分一人その大切さが分かっても仕方がなくて、
リーンなチームに生まれ変わるために、チームメイトにどう働きかけていけばいいの?っていう部分がよく分からない本が多かった。
 
それに対してこの本は、適切なチーミングを発揮していくためにリーダーが果たすべき役割を示すことに重点を置いています。
各章の終わりには必ず「リーダーシップのまとめ」が行われ、さまざまに展開する議論をリーダーとしての役割から整理し直してくれます。
 
 

フレーミングの大切さ

 

おそらく自分自身がどのような課題をもって、どのような組織に関わっているかによって、深く考えるポイントは人それぞれなのではないかと思います。
 
僕がものすごく大切だな、と感じたのは「フレーミング」というリーダーの役割。
チームをどのような組織として定義づけるか、というようなことですが、そこにはいくつかの段階がある。
 
  • リーダーの役割…リーダーは専門家としてフレーミングするか、それともメンバーと相互依存する存在としてフレーミングするか
  • チームの役割…チームのメンバーは技術に長けた補助スタッフとしてフレーミングするか、権限を与えられたパートナーとしてフレーミングされるか
  • プロジェクトの目的…プロジェクトの目的が、受け身で消極的なものとして伝えられるか、向上心あふれるものとして伝えられるか
 
「これから新しいことやるから、よろしく」みたいな掛け声はよく聞く。イノベーションの課題に立ち向かうチームを作ろうとしている場面で。声をかけているリーダー自身も、良いチームを作ろうとして声をかけているが、うまくいかないことがあるのは、きっと3つの要素のうちの何かが欠けているんだろう。
リーダー自身の関わり方が微妙であったり、目的自体の設定が微妙であったり、これまで関わってきたいくつかのチームを振り返って、ものすごくなるほどな、と思った。
また、チームの役割という部分もなかなか難しくて、メンバー間に理解の差があるとたぶんうまくいかない。自分たちは権限を与えられたパートナーなんだ、主体的に関わっていくべきだと全員が認識しなくてはならないし、チーム内に専門家が混ざっている場合もその専門性があるからといって無意味な序列を残してはいけない。ここらへんをチームのスタートの段階で、手を抜かずに、丁寧に行う必要がある。
 
他のメンバーはそれぞれに別の視点を持っていること、自分とは違った角度からものを見たり解釈しているかもしれないことをはっきりと意識し、お互いに話し合うこと
 
これこそが学習する組織としての本質である。そして著者はこうした状況は「企業その他の組織的環境において生じることはまずない」と言い切る。これはリーダーの役割なのだ。
 
フレーミングにおけるステップは「登録」「準備」「試行」「省察」の4段階があるが、このうちリーダーのフレーミングとして特に大切だと感じたのは一番最初の「登録」段階。
 
登録とはチームに加わってもらうメンバーをリーダーが厳選するステップとされます。
「このステップの重要な特徴は、プロジェクトや役割のために特別に選ばれていることを、本人にはっきりと伝えることだ。これにより、専門技術の上でも気持ちの上でもその仕事に深くかかわる用意が整うのである」
 
チームの作られ方にはいろいろあるので、必ずしもリーダー自身が厳選したメンバーではないこともあるだろうし、現実的に専門性やスキルの面で選ばれた特別チームを率いるなんて場面は少ないと思う。それでもこの段階の大切さは変わらないでしょう。むしろ客観的な専門性に裏付けされていないチームのときの方が大切でしょうね。メンバー側に自分でいいのだろうか、とか自分たちでできるんだろうかという不安があるわけだから。
 
例えば自分の経験に照らすと、課題解決型のNPOの現場でボランティアチームを率いる場合、ボランティアメンバーにはその分野における専門性なんかはまったくない場合がほとんど。むしろリーダーすうら専門職ではない場合すらある。それでもそうした課題解決型のNPOが直面する現場というのは明らかに正解のないイノベーションが求められる現場です。であるならば、初心者であっても、知識がなくてもそれに臆することなく、試行を繰り返していくための大切なメンバーであり、コミュニケーションをオープンにしていくことを、初期の段階でしっかりとフレーミングする必要がある、ということですね。
 

■不安を取り除きコミュニケーションをオープンにする

 

また、このコミュニケーションをオープンにするということのためにも、リーダーは心を砕く必要がある。
基本的に人は組織におけるコミュニケーションに心理的な不安を感じているから。
その不安には、いくつかのパターンがある。
 
  • 無知だと思われる不安
  • 無能だと思われる不安
  • ネガディブだと思われる不安
  • 邪魔をする人だと思われる不安
 
率直に話ができる環境でなくては課題解決を続けていくことはむずかしい。
では、こうした不安を取り除くためにリーダーが採るべき行動は、
 
  • 直接話しのできる、親しみやすい人になる
  • 現在持っている知識の限界を認める
  • 自分もよく間違うことを積極的に示す
  • 参加を促す
  • 失敗は学習する機会であることを強調する
  • 具体的な言葉を使う
  • 境界を設ける…非難に値する行動をできる限り明確にする
  • 境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる…受け入れられない行動は公正に対処されることを示す
 

■失敗を歓迎することの意味

 

組織内の不安を取り除くという意味ではメンバー間のコミュニケーションと並んで、試行を繰り返してい行くことが重要だが、そのためには失敗の必然性と価値の両方を理解しているというメッセージを打ち出すことが大切である。
 
失敗も価値あるものであり、インセンティブを与えるべきである。
 
「多くのマネージャーは、社員が失敗は成功と同じくらい良いものだと考え始めてしまうのではないかと思って、何でも許される気ままな雰囲気が作られてしまうことを懸念している。しかし現実には、ほとんどの人が成功したいと高い意欲を持つようになる。誰しも成功したい、能力を認められたいという願いをもともと持っているのだ」
「正式な評価基準や報奨金の問題ではなく、失敗から学んだ教訓を公式ではない場で認めたり祝ったりするかどうかの問題である」
 
これはなるほどと思うと同時に同感。筆者が言う「ほとんどの人が成功したいと高い意欲を持つようになる」と言うのは、無闇にヒトの性善性を信じるというのとは違って、ヒトの社会的欲求を軸とした考え方であり、ポジティブな感情が力を発揮できるようにすることである。うん、これは大切だね。
 

■すべてがこうあってほしいと思うくらいにベストだったか?

 

さて、最後に引用するのは、チームにコミュニケーションを促し、ポジティブな試行に取り組ませるようにするためのリーダーの質問のパワー。
複雑でミスが起こりやすい(必然とさえ捉えられている)医療現場という環境において、医療ミスについての改善を促すために、リーダーが放った質問は
「じゃあ今週、各部署で、担当の感情について、実際にどんなことを経験したか、教えてもらえる?すべてがこうあってほしいと思うのと同じくらいに安全だったかしら」
 
単に「安全でないことがありませんでしたか」と問うのとは意味がまったく異なる。これはシンプルだけど、ものすごい大切ですよね。どれだけ言いやすい、考えやすい環境を作れるか。
 

■以上。

 

ということで。短くまとめるつもりだったけど、だいぶ長くなりましたね。
これでも付箋したとこ全部語り始めると3倍以上になりそうです。
 
それぐらい示唆に富む本でした。
多くの人に読んで欲しい一冊。オススメです。
 

 

チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

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