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朝ぼらけタイガー

読んだ本のレビューが中心です。ランニングなどその他趣味の話も。NPOや自治体など「公益組織」向けのコンサルティングが本業です。元はwebディレクター。

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レビュー:『人生なんて無意味だ』世界は多様で、不条理で、残酷で、無意味だ。

11:書評 哲学 小説

今年読んだ本の中で衝撃度ではこの本が一番。

 

人生なんて無意味だ

人生なんて無意味だ

 

 

あらすじ

ある日クラスの男子ピエールが「意味のあるものなんて一つもないんだから何をしたって無益だ」と気付き、学校へ来るのを辞めてしまう。ピエールはスモモの木の上に腰掛けてみんなに人生に意味なんてないと声をあげる。そのピエールの言葉で「何か」に気づいてしまうことのないようにクラスのみんなは必死にピエールの声に耳を背けようとする。「私」たちは大きくなって成功しなくちゃいけないからだ。だからみんなは「意味のあるもの」があることを証明することにする。みんなの大切な意味のあるものを持ち寄って…。


意味のあるものは見つかるのか。ピエールの考えは、そして私たちの考えは変わるのか。人生に意味はあるのだろうか。

 

こんなお話です。

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企業の社会貢献アプリがブランドと社会課題解決を両立させる3つの要素

21:ニュース アプリ 海外 社会貢献 CSR NPO

先日のアースデー支援のキャンペーンとしてAppleitunes storeで特集していたアプリ特集※に関連してForbesで面白い記事が出ていました。

 

www.forbes.com

 

※…アプリ内での課金による収益金がWWFに寄付され環境保護活動に使われる、というキャンペーン。Apps for Earthと銘打たれたキャンペーンで、すでに終了しています。

 

社会貢献や寄付といったワードは日本でもトレンドになりつつあります。趣向を凝らしたCSR活動や関連したサービスが増えてきています。

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レビュー:『ちいさな カタコトイタリア語ノート』下手な旅行会話本より実地で使える

11:書評 旅行 海外 エッセイ 紀行文 語学

先日イタリア旅行に行く際に飛行機の中で読んだ本です。

 

ちいさなカタコト*イタリア語ノート―フォトエッセイとイラストで楽しむ

ちいさなカタコト*イタリア語ノート―フォトエッセイとイラストで楽しむ

 

 

"お勉強"では気乗りしない方におススメ

海外旅行、それも英語圏ではない場所に行くなら少しでも現地の言葉を覚えていきたいですよね。

 

とはいえいくつかの挨拶とカンタンな単語以上の文章や会話文は付け焼き刃ではなかなか覚えられません。

 

そこで今回選んでみたのがこの本。

 

直前まで準備の時間もあまり取れなかった今回の旅行。飛行機の中でいまさら会話文読んでも頭に入らないだろうなと思い、どうせなら楽しく読めそうなものを選びました。

 

本書はエッセイ風の語学ノートです。

章立てを見ると、

  • 気持ちを伝えるGrazie!
  • バールで朝食を
  • 洋服店・靴屋で

など具体的な場面ごとになっており、語学の会話本と似たような雰囲気ですね。

 

中を開いてみると、写真やイラストがたっぷりと使われたエッセイになっています。

旅行中のいろいろな場面で実際に使われる会話を著者の実際のイタリア経験をもとに紹介してくれます。

 

旅行体験記風なので、自分のこれからの旅行のワクワクを増しながらどんどん読み進めることができました。

 

著者の体験を元にしたエッセイだからこそ実際に使える

楽しくイタリアの予習ができれば良いや、というぐらいの軽い気持ちで読んだ本でしたが、後から振り返ってみるとかなり実際の場面で役立ちました。

 

まず、一冊通して読んでしまえたことでいろいろな場面についてある程度心構えができたこと。

 

とくに写真をふんだんに使っているのが良いです。しかもこの写真の何が良いって、いわゆるガイドブック的な本格的なキレイな写真ではなく、実際に著者が自分のカメラで撮った写真が使われていること。個人の旅行の写真っぽくてテンションあがります。

 

次に、体験を元にしたエッセイで紹介されるエピソードは実際に現地で再現されるものがかなり多かったことも良かった。

 

例えばリストランテやトラットリアでの食事の場面。

 

注文の仕方の例文が載っているのは当然として、まずはメニューの写真を紹介してメニューの見方をあらかじめ覚えておくように書いてあったり、店員さんから聞かれる質問などが具体的に紹介してあります。

 

メニューを渡されて、まず聞かれるのが飲み物の注文。

Da bare?(飲み物は?)

と聞かれるので、もしお水を飲みたい時は次のように言います。

(中略)

とここで一つ注意点!

お水には「ガス入り」と「ガスなし」があり、通常何も言わなければ「ガス入り」が出てくることが多いので、…

 

といったような感じ。このDa bare? という質問実際に何度か聞かれる場面があったのですが、非常に落ち着いて応答することができました。

(回答自体は英語で行うことが多かったです。こちらからの回答は英語で通じることがほとんどなので、質問さえ聞き取れれば困らない場面が多い)

 

実際に観光地では旅行者と分かっているので最初から英語で話しかけてくれる場面も多いのですが、上記の「飲み物は?」のようなカンタンな質問はそのままイタリア語で飛んで来ることがけっこうあります。まぁ当然ですけどね。こういうフレーズに瞬時に反応できると、旅行の楽しさがグッと増します。

 

ひとことフレーズがどんな場面で、そしてどんな気持ちで現地の人が使っているのかということがたくさん書かれているのでこの本で見かけた言葉を聞くたびに楽しい気持ちになりました。

 

ということでオススメです。というかイタリアがものすごくオススメです。超楽しい。

あとで旅行記も書こう。

 

同じシリーズで、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・韓国語・タイ語なども出ているようですので、そっち方面に行く方も良いかも。

 

注意点としては、非常にサクッと読めてしまうので、イタリアまでのフライト中の暇をこの本だけで潰すのは難しいということ。1時間ぐらいで読んでしまえますので読書で暇つぶししたい方は他にも持って行きましょう。

 

ちいさなカタコト*イタリア語ノート―フォトエッセイとイラストで楽しむ

ちいさなカタコト*イタリア語ノート―フォトエッセイとイラストで楽しむ

 

 

仲間内のイベントの集金アプリ「Tilt」が面白そう

アプリ クラウドファンディング 海外 決済 21:ニュース

年々盛り上がりを見せるクラウドファンディング市場ですが、海外では"お金を募る"やり方として新たな形が登場してきています。

 

「Tilt」というサービス。アメリカから始まったサービスで、現在欧米8カ国で展開中のようです。今回オーストラリアでサービスインしたということで記事になっていました。

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レビュー:『さよならは小さい声で』"ていねいに暮らす"とは

11:書評

ひさしぶりの更新。新幹線に乗る機会があり、時間が空いたので書いてみた。

読み終わってて書きたい本はかなり溜まっているんだけど、 なかなかできていない。

そんな、慌ただしい日々を落ち着けたいときの一冊。

 

さよならは小さい声で (PHP文庫)

さよならは小さい声で (PHP文庫)

 

 

松浦弥太郎さん

「上品な暮らし」を追求する雑誌『暮らしの手帖』を編集長として引っ張ってきた松浦弥太郎さんのエッセイ。

 

松浦さんの名前は前から知っていたんだけど、クックパッドに参画されてからがぜん興味を持っていました


と言いつつ、松浦さんの本は長くほしい物リストに突っ込んだままになっていたのですが、先日帰り道にふと立ち寄った本屋でこの本を見かけました。ほしい物リストに入れていたのとは別の本だったのですが、いますぐ読みたいと思ってしまいそのまま購入。

 

200ページ弱の文庫本です。文字も大きいので1時間もかからずに読めます
私は先日まで勤めていた会社までの行き帰りで読みました。


「上品な暮らし」とか「ていねいな暮らし」とかを標榜する松浦さんの本をそんな慌ただしい読み方していいのかな、とも思うのですが、きっと良いのです。


むしろそういう忙しい毎日の中で読むからこそハッと気づくことも多いのではないかと。

 

人をよく見る

通して読んでみての一番の感想は松浦さんという人は「よく人を見る人だなぁ」ということ。

 

この人の「ていねいな暮らし」というのは、自分の周りにいる人たちの言葉とか、所作とか、その他さまざまなモノからの影響を多分に受けている。

 

影響を受けている、というと受動的な言い方だけど、たぶんそれはとても主体的な姿勢。
瞬間瞬間をていねいに過ごすからこそ相手の言動が目に入り、自分を省みることにもつながるんだろうと思う。それに、その影響を受ける相手が言葉とか、所作だけでなく「その他さまざまなモノ」というのがまた、ていねいさの所以というか何たるかというか、というところなんじゃないかと思う。


つかみどころがないということではなくて、余裕がある、ということ。

 

人間関係にルールを
挨拶をする、
よく褒める、
手紙を書く、
感想を伝える、などなど。


松浦さんは人間関係についてのルールをたくさん持っている。これとても良いなと思った。


人間関係を大切にする、と言うのは簡単だけど、ただそう言うだけじゃとても曖昧でたぶんまったく大切にできていない。


自分が相手をどう大切にしたいのか、どういう関係を築いていたいのかを意識するというのは気持ちの良いことだろう。

 

そして人間関係の話からお金の話が出てくるのも面白かった。

 

まず、お金の使い方について投資(将来の利益のための資金投下)、消費(生活に必要なものを買うこと)、浪費(物欲を満たすためだけの行為)の違いを見極めましょう、と。
ここまではよくある話。その見極め方と、捉え方が松浦流。


見極めのコツはお金を使うときに「こんな使い方でお金は喜ぶだろうか」と自問すること、だそう。

 

なにごともそうだけれども、喜んでもらえれば、必ず感謝をされる。悲しませれば、その悲しみは必ず自分に返ってくるだろう。
お金の使い方は人間関係に似ているのである。

 

素敵な言葉

心の歳を取るということは、自分の瞳の輝きや色をさらにきれいに磨くこと。身体の衰えを止めることはできないけれども、心の衰えは止めることはできる。どんなに歳を取っても心というものは磨くことができて、それは自分の瞳に現れる。
年齢を重ねる、または心の歳を取るということは、一歳、そして一歳と、美しくなるということ。人は美しくなるために生きている。人は瞳を磨くために生きていると思った。

 

今年で30歳になる。転職もする。プライベートでも大きな変化があった。


いろいろあって、自分の歳やこれからのことを考える機会が多い最近ですが、こういう素敵な言葉に出会うと歳を重ねていくことが楽しみになる。

 

この本を手にしたのは本当に偶然だったけど、自分がほしい言葉に出会うことができた。


きっと、人によって、瞬間によって見つける言葉も違うんだろうと思うけど、こういう素敵な出会いをしっかり受け止めて楽しんでいくことが「ていねいな暮らし」なんだろうなと思う。心がけていきたいものです。

 

ということでとても楽しく読めました。

 

さよならは小さい声で (PHP文庫)

さよならは小さい声で (PHP文庫)

 

 

もともとほしい物リストに入れていた本もますます気になるので、読んでみたい。

 

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

 

 

世界史の中の宗教を知るために読み始めた本4冊

11:書評 12:本のはなし 宗教 歴史

読書をする中でテーマを決めて、関連する本を読むことがあります。

 

2014年は「歴史」がテーマで、宇宙の歴史から生物の歴史、世界史と少しずつ進めました。

2015年は世界史から派生する形で「宗教、とくに欧米の文化や歴史を知るためのキリスト教」をテーマ置いていました。

 

テーマを置くとはいっても、もう一つ「同じ分野の本は続けて読まない」というやっかいなルールを持っているのでなかなか進まないのですが。

 

さて、そんな感じでごくごくライトな感じにお勉強しているのですが、今日は昨年読んだ本のまとめ。キリスト教や聖書についてはやろうやろうと思いつつ、聖書そのものにもなかなか手が伸びず、何から手をつけて良いのか悩んでいたので、もしそんな奇特な方が他にもいらっしゃれば何か参考にしていただけると幸いです。

 

 

手塚治虫旧約聖書物語(1)〜(3) 

手塚治虫の旧約聖書物語 (1) (集英社文庫)

手塚治虫の旧約聖書物語 (1) (集英社文庫)

 

まず最初に読んだのが、これ。

 

本というか、漫画です。アニメ作品をコミック化したいわゆるフィルムコミックというもの。

 手塚治虫のアニメ作品ということで、「ジャングル大帝」なんかと並ぶ作品ですが、全26話の製作途中に手塚治虫氏本人は亡くなってしまったということで遺作の一つにもなっております。

 

子どもに向けた聖書入門という形で作られているので、非常に分かりやすいです。

 

通して知ってから思えば旧約聖書のお話というのはそもそも分かりやすいお話が多く、知っているものばかりでしたが、全体の流れやつながりはこの本で初めて通して知りました。

 

旧約聖書について興味があるけど、とっつきにくいという印象を持っている方はぜひ。これ以上とっつきやすい入門書はないんじゃないでしょうか。

 

ちなみに、これを読んだあと、同じく手塚治虫の宗教関連のものとしてブッダも未読だったので読んでみました。長いけど面白かった。

 

ブッダ 1

ブッダ 1

 

 

 

聖書物語 

聖書物語 (偕成社文庫 3033)

聖書物語 (偕成社文庫 3033)

 

 漫画から入ったあとに手にした本。これも入門書ですね。手にしたのは実家にあったからでたまたま選んだのですが、面白かった。

 

先の手塚治虫のフィルムコミックは旧約聖書のみですが、この本は旧約、新約どちらも含んでいます。

 

旧約聖書については先の漫画である程度頭に入っているので、すっと読むことができましたし、後半の新約についても前半からの流れで一気に読むことができました。

 

ユダヤ人の歴史 

ユダヤ人の歴史 (河出文庫)

ユダヤ人の歴史 (河出文庫)

 

 この本は昨年末に書いた2015年の読書記録まとめの記事でも紹介しました。(2015年読んで面白かった本15+1冊 - 朝ぼらけタイガー

 

最初の2つの本で旧約聖書新約聖書についてざっと知ることができたので、今度はその周辺の歴史について知りたくなりました。

 

特に興味があったのが、キリスト教ユダヤ教の関係です。ユダヤ教がヨーロッパ社会で嫌われる存在であった、ということはなんとなく知っていますが、それがなぜなのか。そして実際にどのような歴史を歩んできたのか。それが知りたくて手にしたのがこの本。

 

ユダヤ人自身による非常に丁寧なユダヤ人の歴史についての本です。ユダヤ社会は歴史的に分断され、各地、各国でそれぞれのコミュニティを築いてきた歴史があるため、その通史を語るのは容易ではありません。単に個別のコミュニティについて語るのではなく、それぞれのコミュニティが属した社会との関係についても触れざるを得ず、一つの視点で語るのがとても難しいからです。

 

この本は、その難しい課題にとてもうまく答えています。旧約聖書の時代から現代に至るまで、ユダヤ社会がどのように文化や歴史を紡いできたのか、一気に知ることができます。

 

そして著者も強調していましたが、ユダヤ社会を知るということは人間の社会や文化そのものを知ることにもつながる、という点も非常に面白かった。分断されたコミュニティであるにも関わらず、歴史や文化などを共有し、統一されたユダヤ民族としてのアイデンティティを持つユダヤ社会を知ることによって、文化や社会とは何ぞやという点に対しての示唆を得ることができるのです。

 

 

世界の中のパレスチナ問題

世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)
 

続いて読んだのがこの本。前の本でユダヤ人の歴史について知ったので、今度は視点をもう少し広げて見た形です。

 

前の本はユダヤ人が書いたユダヤ人についての歴史の本であるのに対して、この本の著者は中東研究の専門家です。パレスチナイスラエルのどちらかに肩入れするのではなく中立的な視点で語られていますが、個人的には先に読んだ本がユダヤ人が書いた本でしたので、パレスチナ側の視点を知ることができたのが収穫でした。

 

中東の情勢もますます混迷を深めていますが、そもそも問題の根っこには何があるのか。解決の糸口はどうやって見つければ良いのか。普段ニュースなどを見ていてもさっぱり分かりません。少しでも自分で考えたいなと思えばやはり歴史から知る必要があります。その点でこの本は私の問題意識にぴったりフィットしてくれました。

 

以上

ということで、ひとまず以上4冊です。当初の目的であったキリスト教という点ではあまり深掘りできなかったのでもう少し詳しくやりたいなと思っています。

 

また、今度はアジア史もやりたいなと思っているので、仏教の歴史や中国の思想なんかも勉強したいなと思っております。まだ読む本決めていませんが、楽しみです。

レビュー:「こんな夜更けにバナナかよ」福祉・ボランティアルポの傑作

11:書評 NPO ボランティア 福祉

大学時代に何度も読んだ本。昨年まで2年間活動した施設での学習支援ボランティアが佳境に入ったタイミングで久しぶりに読みました。

福祉もの・ボランティアもののルポルタージュとしては自分が知る中で最高の一冊です。

 

 

読んだきっかけ

本格的にボランティアに関わり初めて丸10年近いですが、活動しながら悩むことがあるたびに手に取る本でした。


初めて読んだのは大学一年の頃。当時参加していた児童養護施設での学習指導ボランティアがまったく上手くいかず、毎週の活動が辛くて辛くてしょうがなかったときに手に取りました。自分が抱えていた苦しさや感じていた難しさのいくつかが書かれていてハッとした覚えがあります。


2度目はその一年か一年半後。施設での学習指導ボランティアもやっと楽しくなりリーダーという立場になっていました。担当する子どもとの一対一の関係は良くなっていましたが、それだけでなく組織としてより効果を上げていくことを考えて、活動場所である施設との関係なども悩み始めた時期でした。当時、その施設での非常勤職員として宿直勤務にも入っており、宿直室で徹夜で読んだ記憶があります。(サボっていたわけではなく、待機時間中の過ごし方は自由でした)


その後も何度か手に取り部分的に読むことはありましたが、今回は久しぶりに通しで読み返しました。昨年3月まで2年間参加していた活動は児童養護施設での学習指導ボランティア。まさに大学時代に自分がいちばん関わっていた活動と似た活動です。活動も締めくくりの時期になり、楽しさや難しさなどいろいろと改めて考えているうちに、久しぶりにこの本を思い出して読みながら考えたくなりました。

 

どんな本?

前置きが長くなりました。本の内容に移りましょう。
鹿野さんという筋ジストロフィー症の患者さんと彼を支援するボランティアたちによる「自立生活」を取材したルポです。


筋ジストロフィーというのは体中の筋肉が徐々に動かなくなっていく難病です。鹿野さんは呼吸系の筋肉までが弱り、人工呼吸器をつけるまでに病気が進行した状態で、大勢のボランティアを自力で集めての自立生活を行っています。

 

鹿野さんという障害者のお話なのですが、さて、「障害者のお話」というといったい何を思い浮かべるでしょうか。
障害や福祉、医療といった側面、もしくはボランティアを始めとした支援についてでしょうか。もしくは、それらにまつわる「感動的な」お話といったものを思い浮かべる方もいるでしょうか。

 

人によってさまざまなものをイメージするでしょう。
ただ、身の回りに障害者の知り合いがいない人にとってはそれは非常に漠然としたイメージでしかないのではないかと思います。

 

この本がまずすごいところは、そういう普通の人がイメージしうる視点を盛り込めるだけ盛り込んでいるところです。

 

筋ジスという難病の患者の生活という「医療」の視点、
筋ジスにより徐々に様々なことができなくなっていく、つまり障害の程度が少しずつ重くなっていくという難しい「障害」の視点、
難病・重度障害の人間が地域の中で自立生活を送るという「福祉」の視点、
障害者の生活を支援する「ボランティア」という立場のあり方、
そしてこうした問題を社会的にどう捉え扱うべきなのかという「行政」や「政治」といった問題も出てきます。

 

単純に障害者にまつわる話といっても、そこにはいくつもの観点が存在します。
この本では考えうる観点をできるだけ網羅し問題の全体像の把握を試みているように感じます。

 

まずその観点の広さがすごいのですが、その視点の広さはこの著者が視点を広く持つ専門家だからではありません。
著者は福祉の門外漢として、障害者もボランティアも何にも知らない状態でこの世界に飛び込んできます。

 

そしてそこで活動しながら気づいたことを新鮮な驚きを隠さずに、考え、調べ、書いているのです。つまり初めて福祉の世界に飛び込んだ人が、どういう視点を持ちうるのかが表されている、といえます。

 

ボランティアに参加してここまで幅広く考えることのできる人というのもなかなか少ないと思いますので(福祉本職の人の標準的な視点がどうなのか、は個人的には分かりません)、活動しながら何かしら考えたことがあった人にとっては自分が考えた視点と似た観点もきっと書かれていることと思います。そして、もしかしたら自分がまだ気づいていなかった観点を知ることもできるでしょう。

 

また、視点の幅広さだけではなく、丁寧に深堀りをしているという点が本書を福祉ルポの傑作に高めています。

 

なぜ本書の深堀りの視点が魅力的なのか?

 

それは著者の取材が表面的なものではなく、著者自身がボランティア活動や鹿野さんとの個人的な関係の中に深く潜り込んでいるからです。


福祉も障害もボランティアもなんとなくのイメージでしか知らなかった著者が、実際に"鹿野ボラ”のローテーションに入り込み、鹿野さんの人となりや彼を取り巻くボランティアたち、彼らが作り上げる自立生活を目の当たりにし、驚き、考え、悩み、という過程がもらさず書いてあります。

 

何を悩んでいるのか。私は何を悩んでいるのか。
それをこれから順を追って話していかなければならない。
それにしても、健常者(つまり私)が、障害者について語るというのは、なかなかに難しい問題をいくつか含んでいるものだと思う。どこまで障害者の「立場」に立ってものが言えるのかという問題がまずある。また、彼らの生に厳しさをもたらしてきたのは、いつも健常者中心で物事を選ぼうとする社会なのだろうという負い目もある。そもそも障害者に対する「やさしさ」や「思いやり」とはいったい何だろう、などと考え始めると、それこそ際限がない。
誰しもやさしい自分を演じたいものだし、ただでさえ厳しい生の条件を背負って生きている人を、批判したり皮肉ったり、よもや谷底へ突き落とすようなことは言うべきでないと身構える

 

こうした、悩みの過程がそのまま表現されています。冒頭では障害の問題など何も知らない自分が感じていた先入観についても触れており、そこからこうした深い省察に移っていく過程に惹き込まれます。

 

福祉や教育など人と深く関わる分野に携わったことのある人なら想像がつくかと思いますが、福祉や教育の現場でぶち当たる問題にはほとんど答えの出ない問題ばかりです。なんとなくの美談やべき論に丸め込んでしまうのではなく、答えの出ない問題に悩みぬいて答えが出ないと苦しげに吐露する言葉は、この世界で悩んだことのある人間ならだれでも共感するでしょう。

 

ボランティアの難しさ①―人間同士の一対一の関係

さて、ではそうした福祉の現場で出会う答えの出ない問題とはいったいどういうものでしょうか。


私はこれまで様々なボランティアに関わってきました。自分自身でも多くのボランティアに参加してきましたし、ボランティアコーディネーターとしても多くのボランティアに関わってきましたので、この本もボランティア参加者の視点から読んでいました。
私が考えるボランティアとして一番難しくてやりがいのあるボランティアは福祉や教育など対人支援分野の長期ボランティアです。

 

対人支援というのは当然のことながら国家資格含めた専門職が活躍する分野なのですが、人手の足りなさや問題の切迫具合などからボランティア参加者もかなりの"重い”対応を求められることがあります。

 

また、期間の長短でいえばまちがいなく、同じ活動にある程度の期間携わるもの(頻度にもよるけど最低半年以上)の方が難しさも、楽しさもボランティアの魅力を感じることができます。

 

こうした福祉的現場での重さや期間の長さからくる複雑さが、表面的な取材では見えにくく、見ている側と実際に現場にいる人との温度感のギャップになってしまいがちです。(そしてそのギャップをひとっ飛びに超えてなんとなく伝わることだけを目指すことこそ、福祉やボランティアを語るときに「分かりやすい感動物語」にしてしまいたくなる原因の一つではないかと思います)

 

この本においては著者自身がそうした問題に正面から向き合っています。

 

例えば支援対象者との一対一の関係のあるべき姿とはどういうものなのか、という問題。個人的な人間関係と、助ける⇄助けられるという関係のバランスはなかなか難しい物がありますが、著者はここにはボランティアならではの難しさがあると指摘します。

 

それは「職業、仕事として割り切ることができない」ということです。

 

障害者は基本的に「ただの人」です。気に入らないことがあれば腹も立てるし、機嫌が良い時もあれば悪いこともある。そして、単純に気の合う合わないも、もちろんある。
「助けてあげる」という視点で支援に入った場合、障害者側の「思いもよらない」反発に戸惑ってしまうことはあります。それに対して支援者側がさらに腹を立てることもあります。なんで助けてあげたいのにそんな態度なの?とか、そんなことまで手伝ってあげるべきなの?とか。


福祉や医療の専門職として関わっている場合、思い通りにいかないことがあっても「これは仕事だ」と割り切ることができます。一方でボランティアとして入っている場合、「ここまでやればいい」という範囲が明確でない場合が多いことや、そもそもが自主性に依拠しているため業務範囲があらかじて定められている場合であってもそれを超えてしまう場合は多くあります(運用上のルールをきっちりしておくことはもちろん大切ですが、そのルールに当てはまらない場面もどうやっても出てきます)。仕事として割り切ることができず自分でかかえてしまう。これが苦しさにつながる。

 

人間同士の一対一の関係について嫌でも突き詰めて考えなければいけない場面。

 

いや、それって普通の関係と同じじゃないの?と思われる方もいるかもしれません。それは、もちろんそうなのです。が、当たり前の人間同士としての関係として捉えることを求められるようでいて、人によってはその「普通の関係」の中で人との関係性を突き詰めて考えなければならない場面に実は出会ったことがないという方も決して少なく無いのではないかと思います。

 

ここに福祉関係、教育関係など人と深く関わるボランティアの難しさが現れます。

 

そして、なんとも印象的な本書のタイトルはこの難しさを端的に表している作中のとある人物の言葉から取られています。秀逸です。

 

ボランティアの難しさ②―複数の関係者がいること。

ここまで「一対一の関係」の難しさについて書きましたが、一方でボランティアに関わる上での人間関係の難しさには「複数の人が関わる」という点もあります。

 

鹿野さんの周りにもたくさんの人たちがいます。

 

  • 鹿野ボラのチームメンバー。初心者もベテランもいれば、気の合う人も合わない人もいます。
  • 福祉関係者。鹿野さんの支援にボランティアではなく、福祉職の立場から関わる人もいます。
  • 医療関係者。難病と戦っている鹿野さんには医療関係の専門家も関わっています。
  • 家族。鹿野さんのお母様が登場しましたね。
  • 交友関係。友達や恋人など。

 

一人の人間の周りにはたくさんの人がいる。これも当たり前の話ではあるのですが、一人の人間の「支援」を考えた時に、それぞれの立場によって言動は変わってきますし、ときにはすれ違いも起こりします。個人的なすれ違いではなく、制度上とか立場上とか、別の部分ですれ違いが発生するとけっこうややこしい。

 

鹿野ボラチームの中の崩壊の危機や内部の人間関係のゴタゴタなんかも描かれていましたが、どこのボランティアチームでも大なり小なり起こることです。一対一の関係を突き詰めることも難しい中、支援に関わる人は多く存在しそこも同時に考えていかざるを得ないという点にもボランティアを続けていくことの難しさがあります。

 

ボランティアの難しさーまだまだあるけど。そして難しさがあるからこその楽しさ。

ボランティアの難しさ。というかボランティアにまつわるテーマであればいくらでも語ることができてしまいます。


ただ、このまま思いつくまま書いていくと際限なく長くなってしまうのでやめておきます。


テーマだけ挙げておいて、後で余裕があれば別に書きましょう。

 

「自発性と責任の問題」
「長期ボラと短期ボラ」
「組織としての継続性」

 

などなどは、この本の中でも語られていて考えがいのあるテーマたち。

 

こうして書いてくるとなんだ難しいことばっかりだなという感じですが、こうした普段の生活ではなかなか考えないような難しい視点で考えることを求められるところに楽しさや充実感があるのも事実。だからこそ、せっかく関わるなら長期のボランティアがおすすめなのです。

 

「人の役に立つ」とはなんだろうか

人の役に立つこと

 

ボランティアとは何ぞやと尋ねられて、多くの人がイメージする答えではないでしょうか。

 

ボランティアとは人の役に立つものである、と。

 

実際その通りです。それがなかったら成り立たないですし、そこに喜びを感じるからこそ続けている人間が多い。

 

ただ、人の役に立つって、よくよく考えると難しいものです。

 

助ける、助けられるという関係性。
相手と自分との一対一の関係がどうあるべきか。
相手のできないことをしてあげるという関係でいながら、対等な関係を結ぶということはどういうことか。
そもそも対等な関係とは何か?人との関係は対等であるべきなのか?
どういう場合に対等であるべきなのか?

 

こういった人と人との関係における問題を究極的な形で問われる場面が福祉の分野では多く現れます。

 

もちろんこうした問題は福祉という世界だけに存在するわけではありません。
日常生活、私達の身の回りの人とのごくありふれた関係の中にも突き詰めれればこうしたん問題は出てきます。

 

でもここまで究極的な問題に出会うことはまれです。

 

究極的だけど本質的。

 

それが、ボランティアの世界で感じることができる大きな魅力の一つだと思います。

 

「ある分野について知りたければ、その分野の極端な事例について知り考えることが重要である。そうすることによってその分野についての洞察を深め理解を早めることができる」と世界的なデザインファームのIDEOのティム・ブラウンは著書の中で言っていました。(デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)


この言葉非常に好きなのですが、この本に描かれる、そしてこのエントリで語ってきた「極端な問題」に出会うことのできるボランティアは、社会や人を知る上で非常に貴重な視点を提供してくるものだと考えています。


昨年後半からプロボノ促進の活動という中間支援もやっていますが、やはり「現場」のアツさや難しさを知ることも大事。

 

活動促進をする上でもこの視点は忘れずにいたいところです。

 

「本業のスキルをNPOでも活かす」というプロボノ活動は各NPOの現場よりはバックオフィス系業務で活躍を求められることが多いですので、その「プロボノを促進するという立場」は、さらに間接的な支援となり支援の現場から遠くなりすぎてしまうという点があるのかなと考えています。

 


ということで、長々と書いてしまいましたが、とにかくこの本非常におすすめです。
ボランティアしたことある人にも、これからしてみようかなと考えている人も、ぜひどうぞ。